広島大学 保健管理センター

気分の落ち込み(閾値下うつ)への対処について

閾値下うつへの対処について

英国のNational Institute of Health and Clinical Excellence(国立医療技術評価機構;NICE, 2010)では、閾値下うつには認知行動療法という心理療法が推奨されています。閾値下うつに対する認知行動療法の有効性を検討した結果では、認知行動療法を受けた者は、そうでない者と比べて、閾値下うつ症状が減少し、QOLも改善することが明らかになっています(Takagaki et al., 2016)。閾値下うつは、うつ病のリスクファクターであり、さまざまな機能障害を引き起こすことから、早めに対処することはQOLの向上に役に立つと考えられます。

今回は、認知行動療法の中でも、比較的取り組みやすいと考えられている行動活性化について以下に紹介します。

気分の落ち込みと行動の関係について

気分が落ち込んでくると、普段の生活で楽しいと感じることが少なくなってしまいます。そして、これまでやっていたことも、いまは出来ないと思うようになっていきます。気分と行動の関連性は強く、気分が落ち込んで活動することをやめてしまうと、だんだんと気分の落ち込みの悪循環にはまってしまう可能性があります。

その一方で、活動後に楽しかった、というように気分の変化が生じることもあります。ネガティブな気分に依存して行動するのではなく、普段の生活で楽しみや達成感を感じることができる活動を意識して、取り組むことができれば、気分が変化する可能性が高まります。

そんなことを言われても、気分がおっくうで活動できないから困っていると思われた方もいるかもしれません。言われたからといってすぐにできるものではありません。

気分の落ち込みがあるときには、多くの人は気分に依存した活動を選択して、行動を抑制させてしまいます。このように活動を制限することで、普段の生活で楽しみを感じることのできる活動、リラックスできる活動に従事する可能性を減らしてしまうのです。そのために、まず気分の落ち込みを維持させている自分の行動パターンを知り、対処していくことが大切です。

 なお、身体がしんどいときには休むことも大切です。まずは休むことを試しても良いと思います。休むことで、気分や身体がスッキリするのであれば、休むことが必要だったということです。その一方で、何もしたくないと思って布団の中で休んでいるけど、ますます気分が悪くなり、身体がしんどくなったという経験はないでしょうか?この時は、おそらくおっくうな気持ちから休んだ方が良いと考え、休んだけど、うまくいかなかった、ということです。これがおっくうな気分に依存した行動選択の1例です。このように、まず気分の落ち込みに関連する行動に気づくことが大切です。次に、気分を下げてしまう活動を状況に合わせたより適切な活動へと変化させることが重要になります。

 気分を下げてしまう活動を取るのではなく、楽しみを感じることができたり、リラックスできるような活動を試してみましょう。楽しい活動、リラックスできる活動は人によって異なります。自分にあった活動をまずは実験として試してみましょう。実験として試してみて、楽しいと感じたり、リラックス出来れば、継続して取り組んでいきましょう。以下に活動リストの例を紹介します。自分にあった活動レパートリーを探していきましょう。リスト以外にも、自分にあった活動を探してみましょう。

うまく活動できないときの対処

実験的に新しい活動を試す時には失敗することもあります。しかし、うまくいかなかった経験は、なぜうまくいかなかったかを検証するための貴重なデータとなります。活動できなかったと思った時には、以下のことに参考にうまくいかなかった原因を検証し、次につながる対抗策を考えて、再度チャレンジしてみましょう。

もっと簡単な方法はないか、を考えてみてください。

5分とか、1分、10秒でも大丈夫です。まずはより簡単な活動から試してみましょう。

取り組む活動をスモールステップに分けてみましょう。

取り組む活動が難し過ぎませんか?取り組みたい活動を細かく細分化して、取り組んでみましょう。

まずはほんの少しでも良いです。

あまり無理をしすぎて大変な活動をするのではなく、まずはほんの少しでも身体を動かすことからはじめてください。

活動する前に、何か考えてしまうことはありますか?

活動しようと思っても、直前に「こんなことをして意味があるのかなぁ?」など、活動を抑制してしまう考えが浮かぶことがあります。そんなときには、「少しだけでもやってみよう」など、自分を勇気づけ、自分の背中を押せるようなことを、こころの中で呟いてみるとよいかもしれません。

気分を下げてしまう活動から、気分を安定させる活動へと変化させると、気持ちが楽になることもあれば、そんなに変わらないこともあります。あまり気分が良くならないなぁと思ったときでも、気分の落ち込みに依存した行動を続けるよりも気分の悪化を防ぐことができます。

試してみたけど、自分だけではうまくいかないと思うこともあると思います。そんなときには、保健管理センターや医療機関に相談してみてください。