広島大学 保健管理センター

マイブームの口臭ケア法のご紹介

大学院医系科学研究科先端歯科補綴学教授 津賀一弘

時代は科学的根拠に基づく医療/歯科医療(Evidence Based Medicine/Dentistry)と頭ではわかってはいるのですが、一方で個人の好みや能力に左右される歯ブラシや口臭ケアについては、「それ、誰にでも当てはまるの?」と思ってしまう自分がいます。とりあえず61歳の私が幸いにも今のところ、歯を一本も失わず(神経を取った歯が一本あるのが悔やまれますが)、口臭についても妻や患者様から特にクレーム無く過ごせています。その自分史をもとに、「これがいい!」と独断と偏見で思う口臭ケア方法について、ご紹介したいと思います。

1.重曹応用

怪しいビジネスホテルのユニットバスにあるもの以外、歯磨き粉にフッ素が入っているのは当たり前、の時代ですが、重曹が入っている歯磨き粉をご存知ですか?私も以前は「フッ素が入っていれば何でもいい、要は磨き方=ブラッシング方法の問題」と思っていました。ちょっと前から、台所や水回りの掃除には重曹がブームになっていたのは知っていましたが、ひょんなことから、安くはないけど手頃な価格(1本500円ぐらい)で重曹入りの歯磨き粉がわずかながら2種類、販売されていることを知りました。実はかなり前に試供品で試したことがあったのですが、当時、重曹が入っているとは知らず、またその重要性も気に留めず、一般的な歯磨き粉とは違う「塩辛さ」加減から、全く無視していました。それが、セレンディピティで重曹含有と知ってから、この塩味が心地よくなり、しかも、ブラッシング後の歯の表面のつるつる感が、明らかに他の歯磨き粉よりも良好のように感じています。私のみならず、歯科には素人でとにかく価格にうるさい妻もそう言って購入を許してくれています。前歯の着色も徐々に少なくなっているように感じます。世界的製薬企業の製品で国内販売もそれなりのビッグネームの企業ですが、重曹含有については宣伝していません。なんでだろうと思いつつ磨くと、重曹の粒が歯と歯の間、歯と歯茎の間に入り込んで残る感じがするのですが、これがそのうち効いてくるのかな?と思うと、むしろ爽やかです。

2.3分反応

まだ自分が歯科医師になることなど想像もできなかった子供の頃、歯ブラシは「1日3回3分間」と習ったような気がします。でも3分は結構長いです。そこで最近、秒針付きの時計を洗面台に置き、とにかく3分間はくちゅくちゅうがいを我慢して、唇が泡だらけになっても、何度も上下、内外、歯ブラシで丁寧にこすることにしています。そうすることでエナメル質がフッ素とよく反応して強化され、プラークや着色も酵素や重曹と反応して分解され、歯茎に薬効成分もよく働く、と思うようになりました。歯磨き粉の刺激で唾液の分泌も改善するように思います。口が乾くと口臭が強くなるので、唾液が良く出ることは口臭予防にとても大切です。

3.舌スクイズ

デラックスなタレントさんのテレビコマーシャルでは、舌を泡でみがいていましたね。そう、舌にたまる苔状の舌苔(ぜったい)も口臭の大きな原因です。味覚も損なわれているでしょう。泡で磨くのも良いのですが、歯ブラシするだけでも口の中はすぐに泡だらけです。これを活用しましょう。名付けて「舌スクイズ(tongue squeese)」、世界初の提案公開かもしれません。ブラッシングで口の中に充満した泡を、水をつかわず、頬や舌をしぼるようにして、ペッ!ペッ!と何度も何度も吐き出すのです。するとどうでしょう。舌表面の汚れが歯磨き粉の白い泡と一緒に少しずつ吐き出されてくるではありませんか。そして舌は鮮やかなピンク色を取り戻していきます。慣れてくると、水で口をゆすぐ気にならなくなります。舌を絞り、頬を動かし、食べるための筋力を保ち、唾液も良く出るように。良いことだらけの舌スクイズです。

さて皆さん、いかがでしたか?是非、3日間試してみてください。それで行けそうだったら続けてみたらどうでしょう。だめだったら、半年ごとの歯科検診をお忘れなく!